フォルクスワーゲン(VW)グループは、傘下の高級スポーツカーブランドであるポルシェの業績悪化を受け、約4,100人規模の追加人員削減を検討している。独ハンデルスブラット紙の報道によれば、VW監査役会が進める大規模な構造改革の一環として、ポルシェにおける約7億ユーロ(約1,190億円)の固定費不足を解消するための措置が提示されたものであり、既に合意済みの約9,000人規模のリストラに上乗せされる形となる。
ポルシェの不振は、VW全体の収益にも深刻な影響している。VWは2026年12月期の営業利益が約100億ユーロ(約1兆8,000億円)押し下げられるとの見通しを示し、中国市場での販売不振、EV戦略見直しに伴うコスト増、ポルシェ事業の評価損を主因として挙げた。
さらに、EV全面シフトの急速な進展がポルシェの収益悪化を加速させた。欧州・中国で補助金縮小が進む中、EV需要が減速し、電池コストの高止まりや地場メーカーとの価格競争が激化した結果、ポルシェのEVモデルは収益確保が困難となった。政策主導で進められたEVシフトが市場実態と乖離し、投資回収の遅延を招いたことが固定費不足を一層深刻化させている。
とくに中国市場での販売急減が深刻であり、同社の収益基盤を揺るがしている。EVモデルの競争力不足や戦略転換に伴う追加投資が重荷となり、VWはポルシェ株式の評価額を約60億ユーロ(約1兆200億円)引き下げる減損処理を実施した。
EV全面シフトはVW全体の収益構造にも影響を及ぼしている。欧州では政策の後退によりEV需要が鈍化し、中国では低価格EVの急拡大によりVWのBEV販売が大幅に減少した。こうした地域差は、EVシフトが産業側の準備を上回る速度で進められた結果、投資負担と減損処理が増大し、VWの営業利益押し下げ要因となっている。
こうした状況を踏まえると、ガソリン車とEVを併存させる二頭体制は、VWおよびポルシェにとって現実的かつ合理的な戦略といえる。高付加価値領域では依然として内燃機関車の需要が強く、中国市場では地場メーカーのEV競争力が突出しているため、EV一本化は収益面で大きなリスクを伴う。
ポルシェの業績悪化は、VWグループ全体の収益構造に大きな影響を及ぼしている。中国市場での巻き返しは一定の可能性を有するものの、地場メーカーの競争力向上やEV市場の急速な構造変化を踏まえると、その実現には相応の時間と戦略転換を要する。したがって、追加人員削減を含む固定費削減策とEV戦略の再構築を着実に進めることが、VWグループの収益回復に向けた不可避の対応となる。


