非上場株式の相続税評価は、事業承継の円滑化を図る上で大きな課題となっています。市場で取引されない株式は客観的な時価を把握しにくく、評価額が企業の実態と乖離するケースが少なくありません。その結果、後継者に過大な相続税負担が生じ、事業継続に支障をきたす可能性が指摘されています。このような問題を踏まえ、評価方法の妥当性と公平性を確保することが喫緊の課題となっています。
現行の評価方式は、1964年から続く「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」の併用です。類似業種比準価額方式は、上場企業の株価指標を基礎に、対象企業の売上高・経常利益・配当金を加味して算定するもので、収益力が高い企業ほど評価額が上昇する傾向があります。一方、純資産価額方式は貸借対照表上の純資産を基礎とするため、内部留保が厚い企業や設備投資を重ねてきた製造業では高額になりやすく、帳簿価額が積み上がることで実態以上の評価となる場合があります。
こうした評価額は相続税の課税対象となるため、非上場株式の換金性の低さと相まって、納税資金の確保が大きな負担となります。相続税は原則として10か月以内に現金で納付する必要があり、場合によっては個人資産の売却や金融機関からの借入を余儀なくされるなど、事業承継の円滑性を損なうおそれがあります。
約60年ぶりに抜本的に見直す方針へ
このような状況を踏まえ、国税庁は非上場株式の評価方法を約60年ぶりに抜本的に見直す方針を示しました。新ルール案では、企業の直前期末の純資産に、今後5年間で見込まれる収益力を一定の係数で加味する「残余利益方式」に一本化することとされています。5年間の利益は過去5年間の平均値を用い、赤字の場合も評価に反映します。資産管理会社など一部の企業は従来どおり純資産方式を用いることとなります。
日本経済新聞(8月19日付)の報道によれば、国税庁が検討している非上場株式の相続税評価方法の見直しにより、収益力が高く規模の大きい企業では評価額が上昇し、相続税負担が増加する傾向があると指摘されています。一方で、中小・零細企業については、簿価純資産や収益力が相対的に低いことから、評価額が横ばいまたは減少し、税負担が軽減される見通しです。
国税庁は2026年4月から有識者会議で議論を進め、2027年度税制改正大綱への反映を目指しています。新ルールは2028年1月以降の相続から適用される予定であり、企業は早期に専門家と連携し、株価引下げ策や納税資金対策を講じることが求められます。


