動力プレスの安全確保へ厳格化進む

動力プレスに対する特定自主検査基準が新たに適用されることになった。今回の改正は、労働安全衛生法および作業環境測定法の一部改正を受けたものであり、製造現場における重大災害の発生状況を踏まえ、安全確保の実効性を高める狙いがある。動力プレスは金属加工の現場で広く使用されているが、厚生労働省の統計によれば、プレス機械による死傷災害は年間約250件前後で推移しており、そのうち重篤災害(手指切断・挟まれ事故など)は毎年50件以上発生している。死亡災害も毎年数件報告されており、依然として高いリスクを抱える機械である。

こうした背景から、今回の改正では検査項目と判定基準が一層明確化された。検査対象は機械本体、動力伝達装置、クラッチ、ブレーキ、ディスクブレーキなど多岐にわたる。判定基準は外観検査を基本とし、摩耗、亀裂、損傷の有無、締付け状態、動作の適正さを確認する。例えばクラッチピンの摩耗限度は、100t級プレスで直径減少量1.0mm以内とされ、偏心軸の横振れ量は0.05mm以内が基準である。ブレーキ摩擦板は新品厚さの30%以上を保持していることが求められ、これを下回る場合は交換が必要となる。

安全装置の点検も重要性を増している。光線式安全装置では遮光幅14mm以上、取付け高さ300mm以上が基準であり、両手操作式では左右ボタンの同時押し許容時間差が0.5秒以内とされる。ガードやインターロックについては、開放時に確実に機械が停止することが必須である。過去の災害事例では、インターロックの不作動やガードの不備が原因となった事故が全体の約20%を占めており、安全装置の点検強化は喫緊の課題である。

油圧・空圧・電気系統の点検では、油圧ポンプの圧力が規定値の±10%以内、電気絶縁抵抗が1MΩ以上であることが求められる。停止機能の検査では、急停止時間0.3秒以内、慣性下降量10mm以内が基準であり、非常停止装置の確実な作動が確認されなければならない。回転角度表示計の誤差は±3度以内が許容範囲とされる。

厚生労働省の分析によれば、プレス機械の重大災害の約60%は「不適切な保守点検」が要因であり、特定自主検査の質が安全性に直結している。今回の改正により、検査基準が数値化され、事業者はより客観的な判断が求められることになる。検査結果が基準に適合しない場合は修理や調整を行い、再検査を実施する必要がある。

今回の制度改正は、動力プレスの安全確保に向けた大きな転換点である。事業者には、従来以上に精度の高い点検体制の構築と、作業者の安全教育の徹底が求められる。重大災害を未然に防ぐためには、法令遵守だけでなく、現場レベルでの安全意識の向上が不可欠である。