超円高から円安進行のいまをみると、企業世界ランキングが様変わりしていることに驚かされます。1995年の超円高期には1ドル=80円台という歴史的な円高が進行し、日本企業の時価総額はドル換算で押し上げられました。当時、NTT、トヨタ、住友銀行などが世界上位に並び、上位10社のうち半数近くを日本企業が占める年もありました。
こうした円高は、製造業の競争力を背景に巨額の経常黒字が続いていたこと、円が国際的に「安全資産」とみなされ世界の不安定期に買われやすかったこと、さらに日本の低インフレ・低金利が円の実質価値を高めていたことなど、複数の構造的要因が重なって生じたものでした。その一方で、当時の日本企業は製造業を中心に高い競争力を備えており、為替要因に依存することなく、実力によって世界市場を牽引していたことが分かります。
その後、2011年にも1ドル=75円台という戦後最強レベルの円高が記録され、日本企業の時価総額は再び高く評価されました。トヨタ、ソニー、ホンダなどは一定の存在感を維持しましたが、わずか16年の間に米国のIT企業が世界市場で圧倒的な存在感を確立し、産業構造を大きく塗り替えました。Apple、Google、Amazonが利益率や市場規模で日本企業を上回り、成長産業の中心が製造業からIT・プラットフォームへ移行する構造変化が進みました。2011年の日本企業の順位は円高が支えた面が大きく、産業構造の転換に乗り遅れたことで、実力差が徐々に表面化し始めていた時期でもあります。
そして2026年には、1ドル=160円前後の円安が定着し、日本企業の時価総額はドル換算で大きく縮小しました。トヨタやソニーは依然として高い競争力を持つものの、世界ランキングではNVIDIA、Apple、Microsoftなど米国の巨大テック企業が圧倒的な規模で上位を独占しています。AI、半導体、クラウドといった成長産業が米国に集中し、資本市場も米国企業に巨額の投資を行うことで時価総額は指数的に拡大しました。
一方、日本市場は人口減少と低成長により投資マネーが集まりにくく、国内需要の縮小も企業の成長余地を狭めています。円安は輸出企業の利益を押し上げる側面を持つものの、ドル基準の比較では不利に働き、世界的な評価では存在感が薄れる結果となっています。
世界経済の中心がIT・プラットフォーム・AIへ移行するにつれ、日本企業は成長産業の中心に位置できず、為替が円安に転じた2020年代にはその構造的な差がそのままランキングに反映されるようになりました。

